Living Loving Leuven

溜池や ナマズ飛び込む 水の音

ルーヴェン滞在記

 このブログは2021年4月から2022年3月まで、ベルギーのルーヴェン(Leuven)という小さな街で暮らした記録です。ルーヴェンには、ルーヴェンカソリック大学(KU Leuven)があり、日本からも多くの研究者が訪問・滞在しているはずですが、日本語での情報がほとんどなかったので、私のほうで記録しておこうと思います。コロナ渦のなかでの滞在になりますので、やや特殊な生活になりますが、参考になれば幸いです。途中で更新が止まったらごめんなさい。

気忙しい毎日

 もう2月ですか……。1月は行って、2月は逃げると言いますが、すごい勢いで新年から日々が過ぎています。ちょっとくらい更新したいのですが、なかなか。今日は急に国際学会に出席することになってしまいました。いま若手・院生の国際研究プロジェクトを進めていて、その成果発表です。報告予定の中国の院生が、旧正月とかぶってしまったので、出れなくなってしまったそうです。でも、それ聞いたのは昨日だったので「えええ?!」と思ったのですが、人数が減ってしまったということで急遽、ピンチヒッターで出ることにしました。私としても、「この話題は国際学会での反応どうだろうな?」と思っているネタがあって、それを実験的に披露する機会ができたので良かったんですけどね。大急ぎでスライドを作ったのでヘロヘロになっています。そんなこんなの日々が続いています。

ゲントの四川料理

 いつもどおり、ゲントの美容院へ。今回は短くしてもらって、インナーカラーにアッシュとピンクを入れてもらえました。左右がアシンメトリー気味の髪型。前髪もぱっつんなので、すっきりしました。いつも美容師さんにお任せしてるんですが、自分では思いつかない髪型だけど気にいるので大変ありがたいです。
 冬のゲント。寒そうに写っていますが、そこまでではありません。でも陰鬱。これはこれで雰囲気があって良いでうかね。私は春が待ち遠しいですけども。
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 お昼は四川料理のお店に行きました。平日だったので、お得なランチセットが9ユーロで魅力的。かなり悩んだんですが、どうしても辛いものが食べたくて、麻婆豆腐を注文しました。辛くて熱々だし、ご飯に乗せながら一気に食べてしまいました。ビールグラスはJupilerですが、中身はきんきんに冷えた青島ビールです。満足。
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destinygent.be
 小さなお店だけど雰囲気もいいし、これは夜に数人で来てシェアしたいなあ、などと思いました。隣の席で紳士がフランス語でお話ししてましたが、私が一人で座ってると、ウインクして挨拶してくれました。ベルギーではこういうのは初めてかも。お話し相手はオランダ語圏の人のようで、お互いに途中で英語に切り替えたり、多言語でコミュニケーションしてました。その英語がまた、上手で……。
 最近、ノンネイティブでクリアな発音で、シンプルに正確に英語を話せる人をものすごく尊敬しています。自分が目指すところはこれですね。逆に言うと、私は日本語も標準アクセントで、正規の文法通りに話す練習をしています。もともと私は関西弁話者なんですが、他地域の人と話すためにかなり抑えた話し方は習得しています。でも、留学生やノンネイティブの日本語話者に対してフレンドリーな話し方をしたいなあ、と。同時に、自分は関西人なので、神戸、播州播磨、京都あたりの方言が入り混じった喋り方こそが母語だし、「正しい話し方」にも「美しい言葉」にも全く興味がなく、言葉は生き物だと考えています。なので、英語のいろんなアクセントも学びたいし、できればほかの言語にももう少し親しみたい……といいつつ、時間とエネルギーが割けるのは、今のところ英語だけなのでせめてそれだけでも、それを上達させるだけで人生終わりそうなんですが……

リエージュの美術館&ベトナム料理レストラン

 友人Aとリエージュに行ってきました。冬のベルギー。なかなかの陰鬱な冬が続きます。川はとてもきれいだし、喋りながら散歩すると空気もいいし楽しいんですが、写真の風景は「どこも似た感じになっちゃうな」と残念なところです。逆に言うと、春から初夏にかけて遊びに行くのが待ち遠しいです。去年はソフトロックダウンでほとんどどこにも行けなかったので……
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 美術館の展示は、衝撃のダメさでした。マグリットの特別展だったのですが、小品が4点だけで、あとはホールにプロジェクトマッピングするだけでした。演出も平凡だし、ありがちなものでした。自撮りするのは楽しいのかなあ。しかも15ユーロもするのです。あとはグッズ、グッズ、グッズ。絵はないのに、追加料金を取ろうとするコーナーばっかり。Aと憤慨しながら出てきました。
 常設展は小規模だけど、見どころはあって、ジェームズ・エンソーの絵は良かったです。でも、スタッフは常設展には全く興味がなく、チケットを買おうとしても「マグリットだろ?」と聞き返される有様。ミュージアムパスを出すと嫌な顔をされたのも初めてです。当然の如く、ほかに客はいませんでした。
www.laboverie.com
 ここはとにかく資金難なんでしょうか。これまで行ったベルギーのミュージアムはどれも素晴らしかったので、本当にびっくりでした。文化施設はコロナ渦の影響も大きいだろうし、どこも苦しいのかも……。でも日本でもこんなぼったくりの展示は見たことないので、衝撃的でした。
 それはともかく、リエージュではベトナム料理レストランに行きました。ここはとても美味しくて、満足でした。地元の人たちで満席になっていたので、行くなら予約した方がいいかもしれません。とてもきれいで、リラックスできました。(英語はほとんど通じないので、Aが四苦八苦しながら店員さんに注文をしてくれました)お店は旧正月の飾り付けで華やかでした。
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vietnam-garden.com

ルーヴェンの南インド料理レストラン

 私の知る限り、ルーヴェン南インド料理レストランはIndian Spice Hutの一軒だけです。以前、こちらの研究者と一度行ったことはあるのですが、客があまりおらず、もやっとしたダル(豆カレー)を食べました。悪くはないが、オススメと言うほどではないなあと思っていました。
 でも、金曜日の夜にどろどろに疲れて「どこかでご飯食べて帰るか」と思った時に、ふらっと酔ってしまいました。客はいません。金曜日の夜なのに! 大丈夫かなあと思いつつ、「卵のビリヤニ」があったので注文してみました。すると、なぜ、中華鍋を振る音が聞こえます。「なにか炒めてる? でも私はビリヤニだから関係ないよね?」と思っていたら、私の席にスタッフが持ってきてくれました。
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 これは卵チャーハンでは……。もそもそと食べ始めると、もやっとした風味ですが、だんだんとスパイスの香りがたってきます。しかもライタ(ヨーグルトサラダ)が美味しい! ご飯の山をかき分けていくと、中にはゆで卵がごろんと2個も入っていました。
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 美味しいような、そうでもないような……でも止まらないなあ……などと思いながら、2合くらいはありそうなビリヤニを一人で食べきってしまいました。しかも、家に帰ってから「また食べたいな」と思ったのです。謎の魅力。
 いい店のような気がするんですが、潰れないかかなり心配です。
www.indian-spice-hut.be

メッヘレンの箱庭(enclosed garden)とバー

 1月16-17日で、近くのメッヘレンの街に1泊2日で行ってきました。ルーヴェンから近いので、わざわざ泊まるほどでもない場所なのですが、ちょっと事情がありました。実は電力会社の都合で、1月17日の午前中に私の部屋の電気を一度止めて、工事をすることになったのです。私は神戸出身で、1月17日は阪神淡路大震災の記念日になります。私は周辺被災地に住んでいたので、直接の被害は大きくありませんが、小さな街でしたからもちろん、たくさんの人たちの死や、街の崩壊に直面することになりました。子ども時代の忘れられない記憶になっています。そして、当然、私の家もその日は停電していました。「さすがに、1月17日に電気が止まるのはちょっとなあ」と思い、ショートトリップに出ることにしたのです。でも、そんなに楽しい気持ちにはなりません。ずっと1.17を意識しているわけですから。それで重い体を引きずってメッヘレンまで行きました。
 不思議なんですが、こういうときに限って素敵なお店を見つけてしまうものですね。日曜日なのでレストランは休みのところが多かったのですが、美術館の隣のカフェが空いていたので入ると、暖かくてとっても素敵でした。
dekuub.be
 どこかでランチをしようと彷徨っていると、めちゃくちゃかわいいお店が!なんだか地元民の溜まり場のようで、勇気はいったんですが、思い切って飛び込むと「わあああ」と声をあげそうになりました。予約でいっぱいだったので、注文できるのは飲み物だけ、1時間だけしか無理だということだったんですが、座らせもらうことになりました。
www.facebook.com
 しかし、このお店、誰も来ない。メニューをもらうのに20分、注文するのに20分かかりました。持ってきてもらったのは、席を空けなくてはならないギリギリで、先に会計だけして急いでホットチョコレートをいただきました。美味しかったなあ。写真はとりたかったけど、雰囲気を壊してはいけないと思って遠慮しました。ブランチレストランだそうで、次はちゃんと予約をしてきたいです。
 午後からは、ワロンの地域の博物館へ。小さいけれど、地元の人たちがたくさん訪問していました。オーディオガイドはオランダ語のみでした。残念ながらお返しすると、英語はとても苦手そうな女性がスタッフでしたが「これ、無料なのよ」と勧めてくれました。熱意を感じていい雰囲気でした。
 あとから知ったのですが、この博物館は地域再生のために、市長が住民とともに創設したそうです。何度もミーティングを重ねて、自分たちにとってのメッヘレンを見つめ直しながら、展示の内容を決めていったとのこと。そのなかで、メッヘレンは15世紀にオーストリアのマルガレーテが住み始めたことで、最新の文化や政治制度を取り入れた最先端な街だったことに、住民たちが気づいていきます。その結果、展示はなんと16世紀で終わってしまいます。でも、その頃と、現代を直接結びつけようとすることで、メッヘレンという街のアイデンティティが再構築されているのがよくわかりました。さらに、この展示は「歴史を教える」ものではなく、過去に向き合うことで住民たちや訪問者が語り出し、展示に再影響を与えていくことで「対話のなかで変わっていくもの」だと示唆されていました。素晴らしい試みだなあと思いました。
www.hofvanbusleyden.be
 さらに素晴らしかったのは、最上階に展示されている箱庭(enclosed garden)です。私はこんな美しい祭壇がメッヘレンにあると初めて知りました。修道院で、祈りのために作られたもので、修道女たちが自分たちで人形やお花の位置を変えたり、自分で継ぎ足したりしてきたそうです。
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 この祭壇は、ベルギーだけではなく世界的にも珍しいものだそうです。日本ではメッヘレンはあまり知られていない街ですが、これを見に来るためだけにわざわざ来る価値があると私は思います。
 夜は、これまた地元のバーへ。緊張したのですが、中の男性のスタッフはとても親切でした。牛肉のステーキを注文したら焼肉定食がきました!!ベトナム料理だそうですが、完全に定食屋の焼肉の味でした、懐かしくて一気に食べてしまいました。
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 そのあとは、ジンベースの甘くて強いお酒を飲みながら、本を読んで過ごしました。いい夜でした。こんなふうに一人で夜の街を楽しめるのはありがたいです。
 この日、私は急に「ああ、私はベルギー好きだなあ」と思いました。計画性もなく、ぶらぶらと歩いて、地元の人たちの集まる場所に飛び込んでみたのがよかったのかもしれません。
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