Living Loving Leuven

溜池や ナマズ飛び込む 水の音

ルーヴェン滞在記

 このブログは2021年4月から2022年3月まで、ベルギーのルーヴェン(Leuven)という小さな街で暮らした記録です。ルーヴェンには、ルーヴェンカソリック大学(KU Leuven)があり、日本からも多くの研究者が訪問・滞在しているはずですが、日本語での情報がほとんどなかったので、私のほうで記録しておこうと思います。コロナ渦のなかでの滞在になりますので、やや特殊な生活になりますが、参考になれば幸いです。途中で更新が止まったらごめんなさい。

秋になったと思えば……

 イタリアに行ったのでそれの記録を書こうと思っていたのに、それすらままならず、あちこちの締切に追われています。いつも「この頃は暇なはず」と思うのですが、全然暇にならない。あちこちからお声かけいただいている結果なので、ありがたくはありますが……
 昨日まで、一週間ほど旅してきました。ルーマニアで開催される学会に、ヴィーン経由で夜行列車でいったのです。そんなことしてるから、時間がなくなるんだな。
 それも面白い旅だったのでブログに記録を残したいと思いつつ、すでに月末の学会までに書かねばならぬ書類や原稿が山とあり。
 ルーヴェンに帰ってきたらすっかり秋になっているだろうと予想していたのに、まだまだ暑い日々が続いています。風がすずやかなこともありますが、陽光はじりじりと照り付けます。この夏、もう首と肩が真っ黒に焼けてるんですが、諦めました。日焼け止めを塗っても焼けてしまう紫外線。さすがに来月にはひんやりした秋がくることでしょう……

ジェノバの海の博物館・水族館

 ジェノバの「ガラータ海の博物館(Galata Maritime Museum )」に行きました。入館料17ユーロと強気のお値段ですが、豊富な展示があるので、海洋史に興味ある人は楽しめると思います。
https://galatamuseodelmare.it
 ジェノバといえば、アマルフィヴェネツィアと並ぶ、中世の地中海交易の中心となったイタリアの海洋都市。ジェノバの商人たちの投機とビジネス、ガレー船による戦争の繰り返し、さらに大航海時代が押し寄せてポルトガル・スペインの大西洋貿易に圧倒されて衰退していった歴史までを学ぶことができます。特にジェノバの提督となったアンドレア・ドゥーリアは、傭兵でありながら、フランスからスペインへ雇用主を鞍替えすることで、戦局を一変させてジェノバの歴史を大きく変えました。地元の博物館ならではの語り口で面白かったです。


 そして、後半のジェノバから北米・南米へ渡った移民たちの歴史の展示はとても充実していました。移民を集める街頭の様子、移民船の環境の劣悪さ、渡航先での苦難などを、実際に等身大の展示の中をくぐりぬけることで疑似体験できます。驚いたのは、ブラジルに移民した人たちがサンパウロでコミュニティを作っているのですが、日系ブラジル移民の語りとほぼ重なることです。最後に屋上に出るとジェノバの街並みを一望できます。

 さらに、水族館へ。ここがなんと入館料29ユーロ。衝撃のお値段でしたが、時期によって変動性ですし、他の施設やクルージングとのお得な組み合わせチケットもあるので、行く前に調べていったほうがいいです。ヨーロッパ最大の水族館で人気施設で、予約制になっていますし、要注意。
www.acquariodigenova.it
 さすがに展示はたくさんあって、子どもたちはもちろん、大人も夢中になって海の生き物を眺めていました。日本は山ほど水族館があるので、そのパッションは不思議なかんじもしますが……イルカの水槽の前はゆっくり座れるようになっていて、休憩がてら延々と眺めていました。飼育環境がいいのか、みんな生き物たちが元気でよかったです。



 海の博物館や水族館があるのは、再開発している海岸沿いです。近代的な大きなホテルが建っていて、観光客も賑やかでした。



 夜はジェノバの小さなレストランへ。路地にあるのでドキドキしながら入りましたが、とっても親切で素敵なお店でした。
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 もちろん、ヴェルメンティーノのローカルワイン。美味しかった!

 カッポン・マグロ。ジェノバの名物で、エビや貝と、ジェノベーゼソースで絡めた白身魚の前菜です。このお店はシェアしたいと言うと、一人ずつ盛り付けてくれます。実物は写真以上にキラキラしていてずっと眺めてたかったです。

 これはジェノバ風のポケ丼。いつもだったら、これはパスしそうなんですが、お勧めしてもらって食べたら「ポケ丼ってこんなに美味しいもんだったんだ」と感動しました。

 最後にデザート。焼き桃のショコラ詰め。これはシェアじゃなくて、一個にすべきだった!と思うくらい、あっという間に食べました。

 このお店が好きすぎて、帰りに「明日もテーブルの予約お願いします」と言うと、店員さんが「オッケー」と笑って答えてくれました。良い夜。帰りは海岸が夕焼けできれいでしたが、雰囲気はだんだんと雑然としてきていました。なので、早々にホテルに帰りました。それでもちょっと細い路地に入ってしまい、早足になりました。ジェノバは昼間はまったりと平和ですが、夜は顔が変わるので、そのタイミングを見計らうのが難しいです。


ジェノバの3宮殿

 バルビ通りにある教会。朝の光が入ってくる感じがきれいだった。



 この日は、宮殿めぐり。有名な「赤の宮殿」「白の宮殿」「トゥルシ宮殿」がセットで9ユーロです。破格……でも、全部見ると「もう当分、絵はいいです」という気持ちになるくらいのボリュームがあります。

 ジェノバの商人たちは、ベルギーのブリュージュと交易をしており、深い関係があります。その結果、ルーベンスヤン・ファン・エイクなどの北方ルネサンスの有名画家が招かれ、この地域に多大なる影響を与えました。なので、「フランドル風絵画」があるので、もともとそちらの絵ばかり見ている私にはとても面白かったです。気に入ったのはこの絵。

 フランドルのstill lifeっぽい作品だけど、やたら笑顔のイキイキしたお姉さんがカメラ目線で鳥の羽をむしっています。当時の貴族の娘が、こんなふうに鳥をさばくことはなかったので、これは寓意をこめた構図だそう。フランドルの「すべての生き物は死ぬのだ、人間はそれを食うのだ」みたいな陰鬱な生命観とはちょっと違っていて面白かったです。
 しかし、芸術というものは「この国が一番優れている」なんて言えないのだなあ、としみじみ思いました。イタリアといえば、美術の最高峰みたいなイメージがありましたが、そのなかでもジェノバはフランドルからお金の力を流行画家を呼んできてたわけで……こうやって歴史の流れから見ると、美術はとても面白いです。

 そして、暑い。

 お昼には、地元で人気のお店のファリナータとフォカッチャを食べました。



 ファリナータはひよこ豆の粉を練って焼いた、塩味のお好み焼きみたいな食べ物です。なんともいえん味がして、私はけっこう好きでした。フォカッチャはチーズがフレッシュななにか(わからなくて残念!)で、思い出すだけで幸せな味でした。
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 アイスクリームを食べて帰宅。ちょっと夏バテのような状態で、食欲が落ちるような暑さのジェノバでした……

空港からホテルへ。

 今回はブリュッセルエアライン経由で、ルフトハンザのミュンヘン経由のチケットを取りました。フライト寸前までルフトハンザの労組の組合が交渉中で7月には大規模ストもあり、ヒヤヒヤしましたが、なんとか妥結の方向に話が進み、私たちは無事に飛べました。でも、ミュンヘン空港ではディレイ。腹減りでプレッツェルをかじって待ちました。とりあえず「到着できればそれでいいや」の精神で今年の夏は旅行しております。
 2時間ほどの遅れで、無事にジェノバ空港に到着。小さな空港なので人の流れに沿っていくと、Volabusという会社のバスに乗り込めます。5ユーロで街中まで送迎するシャトルバスです。30分に一本ほどで、時間も正確だし、とっても便利。運転手さんからチケットを買います。クレジットカードが便利でした。
 今回は中央駅(Piazza Principe)のすぐそばのホテルを取りました。
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 昔ながらの駅前のビジホという感じで、お部屋が清潔で割安でとても良かったです。周りは観光客向けのお店やレストランが遅くまでやっているので、夜も明るいので安心感がありました。朝ごはんは、たぶんオーナーさんらしきマダムがピンクのハイヒールで現れます。地味な内容だけど、すぐに補充されるし、きちっと並べられてて真面目な人たち、という印象でした。ドリップのコーヒーがやたらうまかったです。
 毎日、この階段を降りて街に歩いて行ってました。

 ホテルの近くのジェラート屋さん。

 ジェノバ大学を見つけたので冷やかし。新入生のオリエンテーションの準備中のようでした。



 バルビ通りからガリバルディ通りに入ります。そこからルッコリ通りを抜けて海まで。







 カテドラル。フランダースの簡素な聖堂に比べると、ゴージャスで極楽図のような絵に圧倒されました。


 フェラーリ広場。昼間は平和で、若者がたむろってました。

 カフェでスプリッツァ。私はこれがイタリアでやりかったのだ!


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 日が落ちると寂しい雰囲気。このあと、私たちは地元の人がくれたおすすめレストランに行こうとして、マグダレーナ通りを降りていくと、セックスワーカーの女性たちが並んでいて「しまった」となりました。私たちは明らかに彷徨い込んだ観光客だったので、知らん顔で通してもらったんだけど、申し訳なかったです……。

 そして、お目当てのレストランはホリデーで閉店でした。残念!でも、ふらっと入ったお店が素敵だった。観光客相手の里グーリア料理のレストランで、とても親切な女性がアドバイスしてくれて、初日の夜には最適!
 こちらでは、ハウスワインとグラスワインは別物のようで、迷わず高い方の「いいワイン」を選択。もちろん地元のヴェルメンティーノの白ワインで、爽やかな酸味があってクセになります。

 お約束のジェノベーゼ。こちらでは、pestoと呼ばれています。本当は名物のネジネジのショートパスタだったのですが、コックさんが間違えたらしく、ロングの生パスタでした。店員さんは平謝りでしたが、私はロングパスタも大好きなので美味しくいただきました。

 そして、こちらの初めて見たプリモ。黒米の上に、タラが乗ってます。めちゃくちゃおいしかった……

 魚料理。これは間違いなく美味しいです。上機嫌で満腹に。

 夜になるとすっかり暗くなっていました。でもお店はまだまだ賑やか。


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ベルギーでのクレンジング・洗顔

 ベルギーに来て、ここ最近、ついに受け入れたことがあります。それは「石けんでの洗顔を諦める」こと……。私は環境問題に取り組む友人が多いのもあって、日本ではできる限り合成洗剤を使わず、石けんを使ってきました。こちらでも、洗濯やキッチンでは環境にやさしいecoverを愛用しています。環境主義者の友人によると、ecoverは成分分析で一番良い評価を得てるとのことでした。日本でも買えます。

 そして、長らく私は顔もクレンジングのあとに、無添加石けんで洗っていたのですが、ここ1年半暮らしてきて肌の乾燥が止まらなくなりました。医者もおすすめのADERMAの保湿剤はすごく良いけど、それでも乾く…… 困ってしまって、久しぶりに欧州在住者さんのウェブ記事などを読んでいると、衝撃のお知らせが。欧州では顔を洗うのに石けんは適していない……なんということ……。いえ、前から日本からの移住者さんには、こっちの人は顔を洗わず、拭き取りでぬぐうだけだと聞いていました。でも、子どもの頃からスッキリサッパリ洗顔が良いと信じてきた身には、しっかりメイクを落としたいし、ぬるぬるした拭き取り化粧水は信じていませんでした。でも、顔が洗うのが肌の乾燥の原因だろうと判明。
 以下のドイツ在住者さんの記事が詳しくて役立ちました。この方のおすすめのクレンジングミルクと洗顔料を使っています。
maricyan.net
 そうしたら、みるみると肌の状態が落ち着いてきました。あーあ、一年半も石けんにこだわって失敗しちゃったなあ、と思うくらいに……こっちで在住が決まった方には、さっさとこちらの洗顔方法に切り替えるのをおすすめします。今は体を洗うのもBIODERMAに変えました。スーパーで売ってる安いのでもいいんでしょうが、私はすぐに肌が反応して皮が向けたり、かゆくなったりするので、敏感肌用のブランドにしています。 私は食事に関しては適応が早くて、日本食には全くこだわりはなく、さっさとチーズとミルク中心の生活に変えたんですが、スキンケアは日本製にこだわってしまいました。やっぱり、子どもの頃から肌が弱いので、新しいものを使うのが不安だったんでしょうね。でも、大きな薬局も見つけて簡単に敏感肌用の製品が手に入ることもわかったので、あと半年はこういう製品を活用していきたいです。
 ちなみに、こういう商品のほとんどはフランス製。やっぱりフランスは美容に熱心なんですね。ベルギーの人はメイクにそんなに熱心そうでもないし、スキンケアも大雑把だなあと感じます。日本だと、韓国からの最新情報も入ってくるし、ブランドや宣伝文句より有効成分の含有量や、細かな用途をすごく気にするので温度差はあります。薬局で相談しても「これは敏感肌用だから」とか「これはアンチエイジング用だから」とかザックリ言われても、「えええ、それはただの広告」と思ってしまうのはまだ、あります……そして、私の愛用するビタミンC誘導体入りのセラムはこちらではメジャーではないっぽくてガッカリ。フランスに行けばあるのかも?!

半年ぶり

 あまりの日付の飛びように、自分でもびっくりしました。まさか、最後に書いたのが2月だったとは……冬じゃないですか。この頃は陰鬱なベルギーの冬にやられていて、3月に入っても滞在許可が更新されず、戦争でどんどん状況は悪くなり、「日本に帰りたい」という気持ちすら湧いていた頃でした。遠い過去のよう。
 今は、夏の日差しの中、欧州を満喫しています。Covid19にも感染しましたが……
 部屋からの退去の関係で、年始早々に帰国の予定も立て始めました。今は帰りたくないです。せっかく、いいところも嫌なところも見えてきたところで、これからがベルギー生活本番という感じなんですが、学振の規定でどうやっても帰らざるを得ません。残念。
 やっと自分の住んでいるのが、フラームス・ブラバンド州だというアイデンティティも芽生え始めました。ここは、もともとはオランダ語圏の貧しい農民の暮らしていた地域で、田舎者扱いされたり、戦争中にダークな歴史を残していたり、その経緯から極右が強かったりで、とっても難しいところなんですが、私はイケてない場所に愛着を持つタイプなのでちょっと親しみが出てきました。夏の間にぶらぶらと地元の小さな街巡りをしたりしています。
 写真をアップしたりできたらいいですね。でも、来年度の職が決まっておらず、公募の書類を出したり、科研費の書類を作ったりせねばならないので……
 ホリデーも楽しんでいて、来週からは、イタリアに遊びにいくつもりなんですが、ルフトハンザの便なのにストがあるかもしれなくて、そわそわしています。やっとパンデミックによる規制が落ち着いてきたのに、一難さってまた一難。
 そうは言っても、やっぱりお日様が出ている季節はいいですね! 多少のことがあっても、そんなにつらくはありません。