Living Loving Leuven

溜池や ナマズ飛び込む 水の音

「Fake for Real」展(欧州歴史博物館, House of European History)

 欧州歴史博物館の特別展「Fake for Real」に行ってきました。なかなか刺激的なタイトルです。
historia-europa.ep.eu
 展示は、ヨーロッパを中心に、古代から現代に至るまでいかにして、社会で偽の歴史が作られてきたのかを描き出しています。たとえば、ローマ帝国のカラカラ帝の弟の殺害、コンスタンティヌスの寄進状、聖人の捏造、さらには、サルマナザールの台湾偽史。サルマナザールはWikipediaの記事を読むだけでも面白いです。
ja.m.wikipedia.org
 さらには、科学者たちの捏造、そこからユダヤ人種差別を広めた偽り、さらにはナチ時代のユダヤ人たちが生き延びるために作られた偽のIDカードなど、人間が金や名声への欲望や、偏見、さらには命を守るために嘘をつくことを繰り返してきたことが明らかにされます。ポーランドの「カティンの森事件」についての展示では、殺害された人々の家族の証言をビデオを観ることができました。
 現代に至ると、消費社会と嘘がテーマの展示が並べられています。偽のスーパーマーケットの開店を宣伝して、人々を集めた上で「嘘でした」と告げる、チェコドキュメンタリー映画の一部も流されていました。そこで見たのは、騙された人たちが比較的、温和で何もない野原に集められて真実を告げられた人たちが、「今日は晴れてるからピクニックにいいよ」「チェコの夢、って上手いこと言ったよ」みたいなのんびりしたコメントをしていましたが、実際には暴動に近いことが起きたようです。(以下のリンクの動画は暴力的なシーンもあるので閲覧注意です)
www.youtube.com
 最後はインターネットのフェイクニュースなどを扱い、子どもも遊べるゲームのような体験型展示がありました。
 内容はなかなか面白かったですが、展示の解説文が高いところまであって、背の低い私は電灯で光って読めないところが多数ありました。それに、英語の単語レベルが高くて理解するのに一苦労。「人間は嘘を繰り返して、歴史を作ってきたのだ」という現代社会に一石を投じる心意気は買いますが、ややオーディエンスに不親切だなあとも思いました。EU直属の博物館なので、第二言語として英仏蘭語を使う人たちへの配慮はもっとあってもいいのでは。(贅沢な話かもしれませんが!)
 特別展を見るだけで、今回は時間いっぱいになってしまったのですが、本館も面白そうです。以下で欧州博物館の日本語の紹介があります。
allaboutbelgium.com
 このほかにも、EU議会の博物館もあるし、この近くには自然史博物館もあるのですよね。ベルギー滞在中にミュージアムはいくつまわれるでしょうか……?