Living Loving Leuven

溜池や ナマズ飛び込む 水の音

メッヘレンの箱庭(enclosed garden)とバー

 1月16-17日で、近くのメッヘレンの街に1泊2日で行ってきました。ルーヴェンから近いので、わざわざ泊まるほどでもない場所なのですが、ちょっと事情がありました。実は電力会社の都合で、1月17日の午前中に私の部屋の電気を一度止めて、工事をすることになったのです。私は神戸出身で、1月17日は阪神淡路大震災の記念日になります。私は周辺被災地に住んでいたので、直接の被害は大きくありませんが、小さな街でしたからもちろん、たくさんの人たちの死や、街の崩壊に直面することになりました。子ども時代の忘れられない記憶になっています。そして、当然、私の家もその日は停電していました。「さすがに、1月17日に電気が止まるのはちょっとなあ」と思い、ショートトリップに出ることにしたのです。でも、そんなに楽しい気持ちにはなりません。ずっと1.17を意識しているわけですから。それで重い体を引きずってメッヘレンまで行きました。
 不思議なんですが、こういうときに限って素敵なお店を見つけてしまうものですね。日曜日なのでレストランは休みのところが多かったのですが、美術館の隣のカフェが空いていたので入ると、暖かくてとっても素敵でした。
dekuub.be
 どこかでランチをしようと彷徨っていると、めちゃくちゃかわいいお店が!なんだか地元民の溜まり場のようで、勇気はいったんですが、思い切って飛び込むと「わあああ」と声をあげそうになりました。予約でいっぱいだったので、注文できるのは飲み物だけ、1時間だけしか無理だということだったんですが、座らせもらうことになりました。
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 しかし、このお店、誰も来ない。メニューをもらうのに20分、注文するのに20分かかりました。持ってきてもらったのは、席を空けなくてはならないギリギリで、先に会計だけして急いでホットチョコレートをいただきました。美味しかったなあ。写真はとりたかったけど、雰囲気を壊してはいけないと思って遠慮しました。ブランチレストランだそうで、次はちゃんと予約をしてきたいです。
 午後からは、ワロンの地域の博物館へ。小さいけれど、地元の人たちがたくさん訪問していました。オーディオガイドはオランダ語のみでした。残念ながらお返しすると、英語はとても苦手そうな女性がスタッフでしたが「これ、無料なのよ」と勧めてくれました。熱意を感じていい雰囲気でした。
 あとから知ったのですが、この博物館は地域再生のために、市長が住民とともに創設したそうです。何度もミーティングを重ねて、自分たちにとってのメッヘレンを見つめ直しながら、展示の内容を決めていったとのこと。そのなかで、メッヘレンは15世紀にオーストリアのマルガレーテが住み始めたことで、最新の文化や政治制度を取り入れた最先端な街だったことに、住民たちが気づいていきます。その結果、展示はなんと16世紀で終わってしまいます。でも、その頃と、現代を直接結びつけようとすることで、メッヘレンという街のアイデンティティが再構築されているのがよくわかりました。さらに、この展示は「歴史を教える」ものではなく、過去に向き合うことで住民たちや訪問者が語り出し、展示に再影響を与えていくことで「対話のなかで変わっていくもの」だと示唆されていました。素晴らしい試みだなあと思いました。
www.hofvanbusleyden.be
 さらに素晴らしかったのは、最上階に展示されている箱庭(enclosed garden)です。私はこんな美しい祭壇がメッヘレンにあると初めて知りました。修道院で、祈りのために作られたもので、修道女たちが自分たちで人形やお花の位置を変えたり、自分で継ぎ足したりしてきたそうです。
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 この祭壇は、ベルギーだけではなく世界的にも珍しいものだそうです。日本ではメッヘレンはあまり知られていない街ですが、これを見に来るためだけにわざわざ来る価値があると私は思います。
 夜は、これまた地元のバーへ。緊張したのですが、中の男性のスタッフはとても親切でした。牛肉のステーキを注文したら焼肉定食がきました!!ベトナム料理だそうですが、完全に定食屋の焼肉の味でした、懐かしくて一気に食べてしまいました。
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 そのあとは、ジンベースの甘くて強いお酒を飲みながら、本を読んで過ごしました。いい夜でした。こんなふうに一人で夜の街を楽しめるのはありがたいです。
 この日、私は急に「ああ、私はベルギー好きだなあ」と思いました。計画性もなく、ぶらぶらと歩いて、地元の人たちの集まる場所に飛び込んでみたのがよかったのかもしれません。
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